私はグラフィック&デジタルデザイナーですが、大学の専攻は英米文学科でした。ちなみに卒業論文の本に選んだのは、F.スコット・フィツジェラルドの「華麗なるギャツビー」です。
美大出身じゃないのにデザイナーになれるんですか?と聞かれることがあるのですが、なれます。やる気があればなれます。デザイン修行中には美大出身だったら…と何度も思いましたが、月日を経た今になってみれば、全ては必要なことが起きていて、なるようになっているんだな、と思えるようになりました。
というのも、文学を読み解く力がデザイナーとしての大切なスキルを養ってくれたと思うからです。文学部では、本を読み、作家について調べ、時代考証をし、心理学や哲学、社会学にも触れ、自分なりの解釈を綴る、という一連の作業を通して、色々な角度から考える方法を学ぶことができました。
妄想が得意という元々の素質もあるのかもしれませんが、その作家になって考えてみたり、登場人物になって考えてみたり、そして客観的に「私」はどう思うのか、を想像してみたりして、物語を自分なりに読み解くことが好きなのです。正解はこれ!というような、ひとつの答えに縛られない自由さが文学のとても楽しいところだと思います。
そして、この客観的に見る視点はデザイナーとしても必要なスキルでもあります。3つの視点を持ってデザインすることは、デザイナーにとって、とても重要なスキルだと思います。具体的には、クライアント、クライアントのお客さん(誰に向けたメッセージなのか、そのメッセージの受け手となる人たち)、そしてデザイナー、この3つの視点をバランスよく持ってベストなデザインをしていくのです。