ベートーヴェン交響曲第5番
青山のスパイラルホールで上演したダンスパフォーマンスを観てきました。「ベートーヴェン交響曲第5番『運命』全楽章を踊る 〜1つの身体と1台のピアノ。運命が拮抗する、その先へ。〜」
1918年6月、徳島の坂東俘虜収容所で、収容されたドイツ人捕虜により日本で初めてベートヴェンの交響曲が演奏された。100年の歳月を経たいま、誰の心にも強烈な印象を放つ交響曲5番「運命」を、一人のダンサーの身体を透し、時代を索引する4人の振付家が描き出す。海老原光を音楽監督に迎え、今西泰彦のピアノと森下真樹の身体が対峙するとき、運命が、動く。(公式フライヤーより)
それぞれの振付家は以下です。
第一楽章
MIKIKO(演出振付家)
第二楽章
森山未來(俳優・ダンサー)
第三楽章
石川直樹(写真家)
第四楽章
笠井叡(舞踏家・振付家)
第一線で活躍しているばかりなので、すごいラインナップだな、と思いました。
今日はスタイルを変えて、それぞれの楽章に対するダンサー森下真樹さんと、振付家のコメントを紹介して、最後に私の感想を書きます。
第一楽章
真樹さん:音にしがみつき、ぶつかり合うような
MIKIKOさん:曲から感じる強烈な力と抑揚を、真樹さん自身の人生のストーリーに乗せられたらと思っています。
(感想)赤の世界。ストレートな情熱、時代を感じさせるコンテンポラリーな部分と、少しのポップさのちょうどいいバランス。強さと美しさ。
第二楽章
真樹さん:心の中で起こっていること、寄り添うような
未來くん:僕が妄想する「森下真樹」像を彼女自身がデフォルメして、さらに楽曲がアンプリファイ(拡大)するという、面白いことが起こっている。
(感想):白の世界。不思議なユーモアと柔らかさ。音が伝染する奇妙な面白さと一体感。
第三楽章
真樹さん:知らない世界へ引きずりこまれるような
石川さん:本当の体験をしないと意味がない。運命を背負うわけなんだから。
(感想)緑の世界。自然との対峙。自然との一体。新しい世界。
第四楽章
真樹さん:全てを乗り越えるために闘う同士のような
笠井さん:ただ明るいままでは終わらない。昇りつめるような明るさの先には、神々の悦びや苦悶があるような気がする。
(感想)金色の世界。音と共鳴する圧巻のダンス。エナジーの表現。恍惚感。
語彙力が追いつかないので、言葉にするのはとても難しいのですが、そう、言葉ではない芸術の共演を体感した、という感じです。1つの身体と1台のピアノというシンプルな演出なのですが、シンプルだからこそストレートに伝わってくる表現のエネルギーは本当に素晴らしかった!そして、それぞれの振付家の色もよく表現されていて、その違いを堪能することができました。更に、目の前で繰り広げられている舞台の大元には、ベートーヴェンという偉大な作曲家が鎮座しているという大前提に重みを感じたりと、とても密度が濃い50分でした。
あと、真樹さんがアフタートークで話してくれたのですが、踊っているときはピアニストの今西さんと目を合わせることは1度しかないのだけれど、その音でどんな気持ちなのかが伝わってくるから、真樹さんはダンスを通してコミュニケーションをしていたんですよ、と。また、「音になりたい」と言っていた真樹さんの言葉から、表現者としての崇高な思いを感じました。そんな真樹さんに、ダンスと自分自身にまっすぐに向き合っていて、でもストイックで近寄りがたい感じではなく、むしろとても優しくてユニークで上品な可愛らしさをもった、素敵な方という印象を持ちました。今まであまりよく知らなかったのですが、今日でファンになってしまいましたよ。
それから、今一度ベートヴェンという人、その音楽、そして『運命』についても深く知りたいなと思ったのと、やっぱり1度きりの臨場感、演者との距離、それから言葉以外の表現をする芸術っていいなーとも再確認。大収穫のあったパフォーマンスでした!
(今日のブログは独り言っぽくてごめんなさい)
舞台の雰囲気はこちらからどうぞ。
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