近年よく聞かれる「ブランド」「ブランディング」という言葉ですが、グラフィックやウェブのデザインのお仕事をしていると、自ずとブランドのことを考えるようになります。会社や機関そのもののデザインの場合もあれば、商品やイベントのデザインの場合もあるのですが、やはり考えるのは「どうやったら上手にメッセージを伝えることができるか」。メッセージには、商品説明、企業メッセージ、企業やイベント情報といった直接的なものから、イメージ写真やイラストを使用した世界観を伝えるものまで多岐に渡ります。
そんな中、素敵なブランドに出会ったので今日はそのご紹介です。
スウェーデンのブランド「レンメルコーヒー(Lemmel Kaffe)」です。国民一人当たり、年間で800杯近くコーヒーを飲むという北欧の国々ではコーヒーはとても身近な飲み物。もはやスウェーデン文化の代名詞になっているフィーカ(Fika)ですが、コーヒーとシナモンロールと共に、家族や同僚と休憩時間をとることからもコーヒーは大切なものになっているんだと思います。
スウェーデンでは18世紀ごろからコーヒーが飲まれるようになったそうですが、その頃は水を入れたヤカンにローストして粗挽きしたコーヒー豆をそのまま入れて、煮出したものを飲んでいたそう。これはかつて山仕事をする人や漁師など、屋外で仕事をする人々に見られた飲み方で「フィールドコーヒー」と呼ばれていました。1960年代に登場したドリップコーヒーが主流の現在では、ほとんど見られなくなったこの「フィールドコーヒー」を復活させたのが「レンメルコーヒー」です。
そして先日、北欧のアウトドア文化を広める「UPI OUTDOOR 鎌倉」でのイベントに、「レンメルコーヒー」が来日するとのことで行ってきました。
私もコーヒーは好きでほぼ毎日飲むのですが、煮出しコーヒーは初めてでした。ドリップしていないコーヒーを飲むことは恐らく初めてだったのですが、豆の味がより濃い感じがして風味があってとても美味しかったです!
コーヒーそのものが美味しいのはもちろんなのですが、創業者の方たちがつくる世界観がとても素敵だなと思った「レンメルコーヒー」。まずは、ショップの至る所で感じたことを列挙してみます。
・No Milk, No Sugar (ミルクなし、砂糖なしで飲んでね)という案内
・屋外で焚き火をしながら飲むというスタイル
・コーヒーは1種類
・パッケージやポスター、ブランドグッズのデザイン
・スタッフの方が自然体でフレンドリー
そして、コーヒーを飲むときに渡してくれたのがこの「コーヒーの飲み方」。
「1種類のコーヒーを美味しく飲む」という体験そのものを、大切に丁寧に伝えている姿勢がとても素敵だな、と思いました。世界観を伝える、という意味では動画制作にも力を入れていてYouTubeやウェブサイトにはたくさんの素晴らしい動画がアップされています。
こんなところで煮出しコーヒー飲んだら美味しいだろうなー!と思わせてくれるものばかり。
それから、「レンメルコーヒー」誕生についての素敵なストーリーも教えてくれました。
創業者のMarkusとRolfがフライフィッシングをしていたときに、レミング(スウェーデンなどのツンドラ地帯に生息するネズミの一種)が近づいてきて何か騒いでいるから、よく聞いてみると「コーヒー!」と叫んでいました。不思議に思って彼らの後をついていくと、そこではレミングがコーヒー豆をローストしていて、ふたりにコーヒーを出してくれました。そして、最初のレミングがアフリカでコーヒー豆を発見したお話を聞かせてくれたんだとか。
それは、スウェーデンに住んでいたレミングがアフリカに移動して、スウェーデンに帰ってくる時に豆も一緒に持ち帰ったそう。そして、寒くて暗いスウェーデンの冬に、レミングの暖かい体温でその豆がローストされたのが始まりなんだそう。
それからレミングたちはアフリカに行っては戻り、スウェーデンで豆をローストしているそうです。そんなレミングを手伝って市場で売っているのが「レンメルコーヒー」なんですって。うふふ。
創業のお話の他にもデザインについても聞いてみたのですが、95%を自然の中で過ごしているというRolfは美大も出ていないし特別な教育を受けたのではないけれど、自然に思ったままをそのまま形にしているだけだよ、と話してくれました。いつもニコニコしていて「うーん、特別何か意図している訳じゃなくて、自然に好きなものを作っているだけだよー」と。
コーヒーは1種類しかないのに、デザイン違いのキャップはたくさん売っているのでその理由を尋ねてみると「再会した時に同じキャップを被っているのはつまらないでしょ?色々なデザインがあった方が楽しいじゃん!」と。なるほど。確かに。
今回はレンメルコーヒーの3人とお話させてもらったのですが、皆さんとても親切で自然が大好きで暖かくて優しい。そしてユーモアを持って楽しんでこのブランドと共にある、という印象でした。それぞれの役割を尊重して、同じビジョンを共有して、何よりも仲がいいなぁと思いました。素敵なブランドストーリーと、誰よりも作り手が楽しんでいるブランドには、やっぱり人を惹きつける魅力があると再確認させてもらいました。
ほっこり暖かい気持ちになる小さなブランドの大きな魅力のご紹介でした。
それから、私にレンメルコーヒーを紹介して下さった、レンメルコーヒーの正規代理店「UPI OUTDOOR」もまた素敵なブランドです。京都と鎌倉に直営店があって、私は鎌倉の方しか行ったことがないのですが、去年オープンしたてのとても素敵なショップです。鎌倉駅からも近くてアクセス抜群。定期的にイベントも開かれているので、北欧文化とアウトドアとそしておいしいコーヒーと。こちらも素敵なスタッフのみなさんが暖かく迎えてくれると思います。
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