本当の平等な社会主義

前回は歴史のことを取り上げたので、歴史と言えば、と思い浮かんだので今回は「ロシアのコズミズム論(宇宙主義)」について。

ロシア革命後の思想家たちは、「本当の平等な社会主義は、亡くなったすべての人々をもう一度生きさせることが使命である」と発言します。未来の理想の社会のために提言されたこの考えですが、このスケールの大きさと言ったら。

さぁ、今日は壮大にいきますよ!

ではまずはその概要を。

ロシア宇宙主義は自然哲学とキリスト教(ロシア正教)の考え方を基盤としており、宇宙と人間の起源・進化・未来の歴史と哲学を扱う。

草分けとされるのは「モスクワのソクラテス」との異名を持つルミャンツェフ図書館の司書ニコライ・フョードロフ。彼の基本的な思想は、自然を制御することによる死=重力の克服と、全ての父祖の文字通りの復活、そして人間の不死である。フョードロフはこの人間の復活と不死に向けた全人類的なプロジェクトを「共同事業」(obshchee delo)と呼び、全人類が一体となってこの「事業」に取り組むことによって血縁性(rodstvo)を取り戻し、人間の不幸の根本的原因であるこの世界の非血縁性から自らを解放せよと呼びかける。

彼の思想は、ロシアにおいて文学・哲学、政治、科学など多方面に影響を及ぼし、ドストエフスキー、トルストイ、プラトーノフらにも多大なイマジネーションを与えた。

ウェイキペディアより要約)

さぁ、ここまで読んでいかがでしょうか?

私はこの思想を知ったときに、そこまで考えが及ぶ人がいたのか!!と驚愕しました。「今まで亡くなった全ての人をもう一度生き返らせることが本当の社会主義」。た、たしかに!またその思想の斬新さ、でもどこか納得してしまうような思いとが複雑に混じり合い、もしも本当に実現したら…と想像する楽しさもあったりして。

そして、死者の復活のために装置が美術館である、とフョードロフは主張します。人間の生きた証をすべて収集し、ここから死者の復活を果たすためのものだと。な、なるほど。

私はこの思想をアートの文脈で知ったので、装置としての美術館と宇宙主義がここで結びつくことになり興味を持ちました。ですが、過去・現在・未来を捉えて、人間の復活と不死に向けた全人類的なプロジェクトが「共同事業」なので、死者を思う過去のお話はこの壮大な思想のごくごく一部なのです。

科学技術の発展、宇宙開発、そして不死…と、その思想はまさに宇宙のように無限。果てのない世界にワクワクすると同時に、手に負えない感じがして落胆も覚えます。

あとは、フョードロフさんが図書館司書だったこと(膨大な知識の持ち主だったそう)、ロシア革命後、ロシアの文化、それから長く続く厳寒な冬というロシアの気候もあいまって、こんなにもラディカルな思想が生まれたことがまた興味深いです。

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スケールの大きい視点を紹介しましたが、どう思いますか?

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アートの文脈からみるロシア宇宙主義についての記事はこちら。なかなか興味深いですよ。
なぜいま「ロシア宇宙主義」か?

フョードロフさんについて詳しく知りたい方はこちら

※今日のメイン画像は上記「e-flux」が出版する本のカバーです

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youseeaandiseeb
Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。