私は印刷物やデジタル(ウェブサイトやアプリ)のデザインをする仕事をしているのですが、今日は私の仕事には欠かせない書体についてのお話です。
商業デザインには「伝える」という役目があるので、それぞれの制作物にはメッセージがあり、それを伝える手段は写真やイラストなどの画像と文字情報になります。そして、文字を伝える時にデザイントーンも含めて重要になるのが書体選びです。
書体は、最初からパソコンに入っている書体と有料で購入するものがあります。有料のものはデザイン性が高くて、かなり手の込んだものになります。
※ちなみに、書体デザインを生業にするフォント(書体)デザイナーという職業があるくらい、専門性が高くて繊細な世界なのです
すでにインストールされているものも、購入したものも、デザインする時には専門の編集ソフト(イラストレーターやフォトショップなど)の文字パレットに表示され、選べるようになっています。
これまで様々な業種のお仕事に携わってきて、恐らく制作したものの数は4桁はいくだろうと思うのですが、文字パレットで書体を選ぶ時に目にはするけれど、一度も使ったことがないジャンルの書体があります。今日はそんな「気になるあいつ」の「そうだったのか!」という発見をお送りします。
「義理と人情と痩せ我慢」のセリフが有名な、粋でいなせな心意気を持った、きっぷのいい江戸の火消し衆。彼らのユニフォームは半纏(はんてん)ですが、動きやすさなどの機能面、それぞれの組を分かりやすく区別できる模様、そして衣服としてのデザインもカッコイイという優れものですが、そこに使われている書体に注目です。
半纏と纏のデザイン(3331より)
襟と背中に所属する組の文字が入っている、これ、この書体!フォトショップやイラストレーターの文字パレットで、書体セレクションのメニューでいっつも目にするこいつです。自分でインストールした記憶もないのに、何十台という歴代のパソコンにもいっつも入っていたこいつ。でも一度も使ったことがありませんでした。顔と名前は知っているけれど、長年ずっと話したことがない人、みたいな感じ。
でも、そんなこいつはすごいやつ。ひとつの文字のスペースがぎっちぎちで読みづらいなー、と思っていたのですが、それは近くで見ているから。実はこいつは、火事現場で自分の組がどこにいるのかすぐに発見できるよう、きちんと設計されたものだったのです。半纏だけでなく、纏(まとい)や提灯(ちょうちん)も遠くから判別できた方がいい。いや、むしろ遠くからきちんと判別できればいい。
なるほどー!そうなんです。印刷物やウェブサイト、アプリなんかの身近なものをデザインする私には縁がないのも当然と言いましょうか。長年気になっていたあいつは、近いからこそ見えない関係、を表現している粋でいなせな書体だったんですね。
いやー、長年の疑問が解けてとてもスッキリ!きちんとした役割を持った歴史のある書体だったことを知ることができて本当によかったー!!晴れ晴れ。
… なんて、今日はちょっとマニアックだったかな。
それと最近では、循環型都市設計のモデルやサステナビリティといった面で注目されている江戸時代ですが、私は文化が花開いた豊かな時代ということで注目しています。浮世絵も、着物も、江戸っ子の心意気なんかにも興味津々です。
そんな江戸町の火消しについて教えてくれた、「江戸町火消絵師」岡田親さんの作品(3331ウェブサイトより)
岡田親さんの展示情報
<アーツ千代田 3331 特別企画展 「ときを渡る〜”山王さん”を支えた町の150年〜」> http://www.3331.jp/schedule/004281.html
|
<岡田親 錦絵展 もしも私が北斎だったら> https://www.ito-ya.co.jp/store/itoya/gitoya/recommend/2018/04/002913.html
|
※今日のメイン画像はビートルズ来日の風景ですが、彼らが来ている半纏には「日航」「JAL」とあるので、彼らはJAL所属のミュージシャン
Leave a Comment