ただ座る

10年前くらいから禅宗に興味があって本などで勉強しているのですが、瞑想やマインドフルネス、呼吸法を実践する人が増えているのに従い、参禅する人も増えているみたいで、禅好きとしては嬉しいです。私もたまに参禅するのですが、今日はそのことについてです。

西麻布にある「永平寺別院 長谷寺」では、月曜参禅といって毎週月曜の夜に座禅会が行われています。参加費は100円で、どなたでも参加できます。初心者講習もあって初めての人には、お坊さんがとても丁寧に禅や座禅について教えてくれる講習がまずあります。そして、2-5回目の人には実際に座禅をしながら作法などをお坊さんが一緒に教えてくれます。6回目以降の人は説明なく、ただ座るのみです。

「ただ座る」ことは家でもできるのですが、私が参禅する理由は、その雰囲気がいいな、と思うからです。
西麻布という都心にも関わらず、境内はとても静かで空気が澄んでいて新鮮な気持ちになります。門をくぐって右手の観音堂では、楠を一本彫りにしてつくられた麻布大観音さんは、穏やかな感じで優しく見下ろしてくれます。そして、参禅が行われるお堂ですが、薄暗い空間、お香の香り、畳、お坊さんたちの黒い袈裟、仏教装飾と、その異空間に背筋がピンと張るのですが、どこか懐かしい感じがしてとても落ち着きます。

それから、座禅をしに行っているので当然なのですが、ほぼ会話なしです。参禅者は人も人数も毎回違い、会話もないのですが、座禅の前には、隣位問訊(りんいもんじん)と対坐問訊(たいざもんじん)と言って、お隣になった人、対面の人に「ご縁があって一緒に座らせていただきます。よろしくお願いします」という挨拶の意味で合掌します。言葉は発せず、目も合わせないのですが、手を合わせて一礼する、という挨拶がとても日本人ぽくて私は好きです。座禅中も一緒に座っている人の気配は感じるのですが、話すこともなく、ただ共に座る。そして、座禅が終わっても、特に言葉を交わすことはなく、ではまた、みたいな感じで一礼してそれぞれ帰っていく、というこの淡々とした距離感が心地よく感じます。

あとは、参禅者は、お母さんに連れられた小学生の男の子、若いお姉さん、お仕事帰りのビジネスマン、年配の方、外国人の方と老若男女さまざまで、言葉は交わすことはないけれど、同じ目的のために集まって、同じ空間でただ共に座る、そんな交流もまたいいな、と思うのです。

参禅が終わってお堂から出てくると20時くらいなので、辺りはすっかり暗くなっているのですが、静けさ、水の音、開けた空、日によってはお月さまや星も見えるので、そんな中で深呼吸をすると、とても気持ちがよいです。

静かな空間での静かな時間。おすすめです。

永平寺別院 長谷寺

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Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。