目玉商品:樹木希林

前回はスウェーデンを代表するデザイナー「インゲヤード・ローマン」さんについてでした。

彼女は今年75歳なのですが、偶然にもここ数日素敵な70代を知る機会があったので、素敵な70代シリーズとしてあとお二方ご紹介します。

二人目の今回は「樹木希林」さんについて(偶然にもインゲヤード・ローマンさんと同じ年)。

存在感があり、個性的で素晴らしい役者さんなのでご存知の方も多いかと思います。
私も出演作品はいくつか観ていてこのブログでも紹介したもの(モリのいる場所)もあるのですが、やはりその唯一無二の存在感と演技は圧倒的で見入ってしまいます。近年の代表作だと『あん』でしょうか。原作を読んだこともあり思い入れがあったのですが、映画版を観たときには想像以上のものでとても感動しました。お孫さんの伽羅さんも素晴らしかったです。

それから『モリのいる場所』も印象に残っています。モリ役の山崎努さんとのやりとりはとても自然で本当のご夫婦のようで、今もどこかに住んでいるような錯覚を覚えます。

まだ観ていないのですが『万引き家族』も楽しみですし、この秋公開される『日日是好日』も観ようと思います。(原作を読んだので、その時のブログはこちら

年に何本も映画出演されているので信じられないのですが、数年前に癌を発病されていることを公表し、闘病しながら精力的に役者を続けておられました。先日、病気を公表されてからの希林さんの日常を追ったドキュメンタリー番組をみたのですが、その生きる姿勢を少し垣間見ることができたような気がします。

私は、希林さんとは「思いやり」と「作る」人、なんじゃないかなと思いました。

番組中、印象に残った3人とのやりとりからそう思ったのですが、

1. ヘアメイクさんに対して
映画撮影のためにヘアスタイルをセットしてもらう場面で、ヘアメイクさんの「どういう風がいいと思いますか?」の問いに対して、「あなたが思う通りにしなさい。私に聞かないで。あなたが思うようにすればいいの」と強めに答えます。そして、ちょっと空気がピリッとなったときに「大丈夫よ。責任取らせるようにはしないから」と、優しい表情で付け加えます。

2. 浅田美代子さんに対して
役者の仕事をかなり減らした時に、初めて映画のプロデュースの仕事をします。その主役を長年のお付き合いのある浅田美代子さんに決めました。「あの子に代表作品を作ってあげたかった」からなんだそう。

3. このドキュメンタリー番組のディレクターさんに対して
数年間密着して日常を追って行く中、希林さんの体調がだんだん悪くなって行き、次第にイライラが募っていきます。ディレクターさんも家族のことなど全てを打ち明けたりして、本音のやりとりが垣間見れるような深い関係が築けているように見えたのですが、そんなディレクターさんとのやりとりも次第に、「こんなの撮ってどうなるの?あなたは何が撮りたいの?何これ?こんな目玉商品がない番組に意味があるの?」と怒りをぶつけるようになります。

その後、数ヶ月経った頃に希林さんから連絡が入り、また番組の撮影が始まりました。久しぶりに会った希林さんはレントゲン写真を見せて「癌は骨にまで転移しているのよ」と全身に広がった癌の様子を知らせます。そして「目玉商品ができたじゃない」と。

…このやりとりを通して、「どうしたらこの人の役に立てるだろう」「どうしたらよい作品を作ることができるだろう?」そんな風に、いつだって相手の立場を思いやり、そして「いい作品」を作ることだけを考えていたように思います。自身のことも作品を構成する一部なんだという目で見ているような感じで、冷静に客観的に観察している部分があるようにも見えました。

そして、いい所もそうでない所も全ての自分を認める強さがあり、愛情深くて、嘘偽りのない真っ直ぐな人。番組の最後に、遺作となったドイツの映画の撮影風景が放送されていましたが、陽だまりの縁側での幸せそうな様子はとーーっても美しかったです。この映画もまた観たいと思います。

ご冥福をお祈りします。希林さんありがとう。

※今日のメイン画像はAdverTimesより(このページの希林さんのインタビューも一読の価値アリです)

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youseeaandiseeb
Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。