日日是好日

今日は本の紹介です。先日本屋さんでふと目にして面白そうだったので読んでみました。森下典子さんの『日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』。

まずは内容の紹介を。

お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死という悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる……季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている! 」その感動を鮮やかに綴る。

お茶の学びを通して、日常生活をよりよく生きるためのヒントが描かれています。主人公の人生の歩みの中で起こる出来事と、お茶の教室での学びがうまく結びついているお話です。物語はつながっていますが、15章それぞれに気づきのタイトルがつけられているので、とても読みやすいです。私が本屋さんで購入したきっかけが、この15章のタイトルがとても気になったからです。

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序章 
茶人という生きもの

第一章 
「自分は何も知らない」ということを知る

第二章 
頭で考えようとしないこと

第三章 
「今」に気持ちを集中すること

第四章 
見て感じること

第五章 
たくさんの「本物」を見ること

第六章 
季節を味わうこと

第七章 
五感で自然とつながること

第八章 
今、ここにいること

第九章 
自然に身を任せ、時を過ごすこと

第十章 
このままでよい、ということ

第十一章 
別れは必ずやってくること

第十二章 
自分の内側に耳をすますこと

第十三章 
雨の日は、雨を聴くこと

第十四章 
成長を待つこと

第十五章 
長い目で今を生きること

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どうでしょうか?それぞれの章のタイトルだけでも、すでに読みたくなりませんか?

お着物も、お華も、きっと他の日本の伝統文化も、この本と同じ心持ちで日日を過ごすようなものじゃないかなと思います。それから、タイトルの「日日是好日」は禅語のひとつで人によって解釈は様々ですが、私は、毎日を丁寧に自然に寄り添いながら、自分に正直に明るく楽しく、毎日が好日となるよう心がける、と捉えます。

また、文中には音の表現(オノマトペ)が多様されているので読み心地がとてもよいです。チョロチョロチョロチョロ、ザァー、パラパラパラ、ポツポツポツ、キラキラ、シャシャシャシャシャなどなど。それから、お茶にまつわる専門用語や、季節のことば、和菓子について、浮世絵や掛け軸、それから禅の教えなども登場するので、お茶以外のことについても学ぶことができます。やはり何を通して学ぶかの違いで、気づきはきっと同じこと。

そして、私が特にいいな、と思った一文は以下になります。

「伝統」とは古くさいものだと思いこんでいたが、そうではなかった。本物の伝統は、モダンで斬新だったのだ。私はその時、「ジャポニズム」にあこがれた百年前のフランス人の「目」になって日本という「異国」を見ていた。

私も近年、日本文化をきちんと学び始めたのですが、まさにこのような感覚です。学ぶ度に驚きと学びがあるのですが、本当にモダンで斬新で格好いいと思うのです。恥ずかしながら知らないことだらけで、自国の文化とは思えない驚きもありますが、少しずつ自分のものにしていけたらな、と思います。

それから、この本が秋に映画化されるようですね。黒木華さん、樹木希林さんが主演ということで、とても楽しみです。最後に本の帯のことばも印象的だったのでご紹介しますね。

会いたいと思ったら、会わなければいけない。好きな人がいたら、好きだと言わなければいけない。
花が咲いたら、祝おう。恋をしたら、溺れよう。嬉しかったら、分かち合おう。
幸せな時は、その幸せを抱きしめて、百パーセントかみしめる。
それがたぶん、人間にできる、あらんかぎりのことなのだ。

 

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Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。