前回はブルーノ・タウトについて紹介しましたが、今日は「熱海の家」(旧日向邸)についてです。
アジア貿易で活躍した日向利兵衛さんが依頼主。ちなみに、木造二階建ての母屋の設計は、東京銀座の和光、東京上野の東京国立博物館、 愛知県庁などの設計で知られる渡辺仁だと言うから、この日向さんは文化・芸術に詳しくてセンスがよい方だったんだと想像します。そして、「製作費用はいくらかかってもよいので、好きなようにつくってください」と言ってタウトに発注したとのこと。タウトを信用して全て任せ、金銭的な面でも制限がないだなんて、夢のようなプロジェクト。いいものを作るには依頼主の理解も必要だよね、なんて考えさせられもします。
この「熱海の家」は「別邸の地下室」と紹介されることも多いのですが、地下室という名の「社交場のための離れ」の方が実物を説明するのには合っている言葉だと思います。大きく分けて3つの部屋がありますし、真ん中の部屋には大きな窓があってそこから太平洋が一望できる、なんとも贅沢な「地下室」空間なのです。