さくら色とピンク色

今日は色についてのお話です。
まずはその意味からどうぞ。

(いろ)
可視光の組成の差によって感覚質の差が認められる視知覚である色知覚、および、色知覚を起こす刺激である色刺激を指す。

色覚は、目を受容器とする感覚である視覚の機能のひとつであり、色刺激に由来する知覚である色知覚を司る。色知覚は、質量や体積のような機械的な物理量ではなく、音の大きさのような心理物理量である。同一の色刺激であっても同一の色知覚が成立するとは限らず、前後の知覚や観測者の状態によって、結果は異なる。

上記説明の後半部分「同一の色刺激であっても同一の色知覚が成立するとは限らず、前後の知覚や観測者の状態によって、結果は異なる。」をもっと詳しく説明したのが以下。

色覚の共有
同じ組成の光を受けた場合でも、それをどのように知覚するかは人それぞれの目と脳の相関関係によって異なるので、複数の人間が全く同一の色覚を共有しているわけではない。同様に、ある人が同じ物を見ても右目と左目では角度や距離が異なり、見えた色も一致しない。他者の色知覚を経験する手段は存在せず、同一の色知覚を共有することも不可能である。

また、知覚した色をどのような色名で呼ぶかは学習によって決定される事柄であり、例えば緑色を見て二人の人間が異なる知覚を得たとしても、二人ともそれを「緑」と呼ぶので、色覚の違いは表面化しない。

まさにこのブログのコンセプト「視点の違い」を、色覚を対象に科学的に見事に説明しているので、ちょっと感動しました。「他者の色知覚を経験する手段は存在せず、同一の色知覚を共有することも不可能である」。ですです。文章を書くことにまだ慣れていない(←視覚人間)ので、そうそう、それが言いたかったの!という文章や、説明が上手な人に出会うと妙に感動するのです。

えーと、他社の「正しい」を経験する手段は存在せず、同一の「正しい」を共有することも不可能である。そんな世の中で「違い」を楽しみたい今日この頃です。

さて、もはやひとりひとりが違って見える色の世界ですが、今日は文化による代表的な色の違いについてです。

私は旅行が好きで国内外よく出かけるのですが、海外では特に空港を降り立ったらまずは空を見上げます。気候や季節、緯度、標高、空気中の湿度などの条件によって空の色は全く違って見えるからです。この違いは、その国や地域の文化に色濃く反映され、芸術作品などをはじめとした視覚文化作品や、衣食住などの身近な品々にもその特色が現れていると思います。

そこで同じ文化を共有する人にとっての色の名前に着目してみました。
今日は日本人にとっての特別な色、「ピンク」を例にあげてみようと思います。

まずは日本から。
四季と二十四節気と七十二候もそうですが、日本の伝統色の名前もネーミングからして素敵です。

※今回は和色大辞典サイトのピンクエリアを参照にしました

 桜色(さくらいろ)

 薄桜(うすざくら)

 桜鼠(さくらねず)

 鴇鼠(ときねず)

 虹色(にじいろ)

 珊瑚色(さんごいろ)

 一斤染(いっこんぞめ)

 宍色(ししいろ)

 紅梅色(こうばいいろ)

 薄紅(うすべに)

 甚三紅(じんざもみ)

 桃色(ももいろ)

 鴇色(ときいろ)

 撫子色(なでしこいろ)

 灰梅(はいうめ)

 灰桜(はいざくら)

 淡紅藤(あわべにふじ)

 石竹色(せきちくいろ)

 薄紅梅(うすこうばい)

 桃花色(ももはないろ)

 水柿(みずがき)

 ときがら茶(ときがらちゃ)

 退紅(あらぞめ)

 薄柿(うすがき)

 長春色(ちょうしゅんいろ)

 梅鼠(うめねず)

 鴇浅葱(ときあさぎ)

 梅染(うめぞめ)

 蘇芳香(すおうこう)

 浅蘇芳(あさすおう)

 真朱(まそお)

 赤紫(あかむらさき)

 躑躅色(つつじいろ)

 牡丹色(ぼたんいろ)

 今様色(いまよういろ)

 中紅(なかべに)

 薔薇色(ばらいろ)

 韓紅(からくれない)

※今日のイメージ画像はこれら全てのピンク色を並べました

さて、次は英語でのピンク。
アメリカのフロリダ在住のグラフィックデザイナーのウェブサイトより(ということはアメリカの文化に大きく影響されている名前になりますね)

 PINK(ピンク)

 RUBY(ルビー)

 ULTRA(ウルトラ)

 THULIAN(ツリウムが入った鉱物)

 MAGENTA(マジェンタ)

 ROSE PINK(ローズピンク)

 LAVENDER(ラベンダー)

 CREAMY(クリーミー)

 FUCHSIA(フクシアという植物)

 FRENCH ROSE(フレンチローズ)

 CERISE(サクランボ色)

 CARNATION(カーネーション)

 BRICK(れんが)

 AMARANTH(アマランスという植物)

 TAFFY(タフィーというアメリカのお菓子)

 BUBBLE GUM(バブルガム)

 HOT PINK(ホットピンク)

 PUNCH(ポンチ。果汁などを混ぜて作る飲料)

 LEMONADE(レモネード)

 FLAMINGO(フラミンゴ)

どうでしょうか?全体的なイメージとして、日本の方は淡く、少しくすんでいて優しい印象があるように思います。
それに比べて、英語の方(アメリカ)は、濃くてハッキリとした印象ですよね。

それから名前にも注目です。日本の方は植物からつけたものが殆どですね。アメリカの方にも植物の名前がありますが、鉱物やお菓子、飲料の名前がついているのも、その文化を表現しているように思います。

ちなみに、コード上(色をウェブサイトで表現する6桁の数値)でですが、同じ数値のものはなく、全て違う「ピンク」を表現しているのです。もちろん私が今日ピックアップした以外にもピンクの色は存在するし、そもそも色を区分けすることは不可能だと思うのですが、どこをピックアップして「ピンク」と名付けたかが人(国や地域)によって違うのは興味深いですねー!

そして、これらの色を見ていて思ったことは、国民性も表現しているんじゃないかな?と。気候や季節、緯度、標高、空気中の湿度などの条件によって空の色は全く違って見える、と最初に書いたのですが、同じようにそれらの条件によって国民性の違いがあるような気がします。そう、その場所で咲く花の種類が違うように。

今日は書きながら、調べながら私も色々と発見したので、文章がまとまっていなくてすみません。
なのですが、最後に「聞いて!」という内容をひとつご紹介したいです。ピンクの色についてウィキペディアの英語版で見つけた内容です。”Shades of pink“(ピンクの色調)というページに、”Cherry blossom pink“(桜ピンク)を発見しました!そしてそのコードは以下。

 Cherry blossom pink

どう見えるでしょうか?コード上では、今日紹介した日本の伝統色にはないものです。
そしてそして、この色の説明文には「英語でのこの色の名前がつけられたのは1867年。桜ピンクは日本文化でとても重要です。春になると日本人は花見をし、この文化はアメリカのワシントン州にも広がっています。また、オーストラリアのブリズベンでは”Cherry Blossom Day”(桜の日)を祝うために9月15日(南半球で春が始まる少し前)にこの色のシャツが着られることがあります」と。

このウィキペディアのピンク色のページには他の文化を表現する色もあるので、とても面白いです。スペインのピンク、わたあめのピンク、おとぎばなし、中国のピンク、コンゴのピンク、ニューヨークのピンク、女王のピンク、メキシコのピンク、バービーのピンク、フランスのピンク、ペルシャのピンク、パラダイスピンクなどなど。
多くはアメリカの会社、Crayola(文房具メーカー。クレヨンやマーカーなどを販売)や、Pantone(カラーシステムや色選択技術、高精度のカラーコミュニケーション技術を提供)によって策定されたようです。

色と文化もまたじっくりと勉強したいテーマのひとつです。

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Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。