椰子の実

今日は海の日ですね!1996年から施行されたこの祝日、制定当初は7月20日と日にちが決まっていましたが、ハッピーマンデー制度により7月の第3月曜日と変更されました。また、「海の日」として祝日化される前は「海の記念日」という記念日だったよう。

海の記念日は、1876年(明治9年)、明治天皇の東北地方巡幸の際、それまでの軍艦ではなく灯台巡視の汽船「明治丸」によって航海をし、7月20日に横浜港に帰着したことにちなみ、1941年(昭和16年)に逓信大臣・村田省蔵の提唱により制定された。

ウィキペディアより)

ちなみに、「海の日」として祝日化されているのは日本だけのようで、四方を海に囲まれた国ならではの思いがあるように思います。

…前置きが長くなりましたが、今日は「海の日」にちなんで「海の歌」についてです。

「椰子の実」

一、

名も知らぬ 遠き島より

流れ寄る 椰子の実一つ

故郷(ふるさと)の岸を離れて

汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)

二、

旧(もと)の木は 生(お)いや茂れる

枝はなお 影をやなせる

我もまた 渚を枕

孤身(ひとりみ)の 浮寝の旅ぞ

三、

実をとりて 胸にあつれば

新たなり 流離の憂(うれい)

海の日の沈むを 見れば

激(たぎ)り落つ 異郷の涙

思いやる 八重の汐々(しおじお)

いずれの日にか 故国(くに)に帰らん

—–

1901年に書かれた島崎藤村の詩に、1936年に大中寅二が作曲された曲です。「日本の歌百選」にも選ばれていて、私は小学校で習いました。小学校で習った歌というのは歌詞は意味が分からなくても、今でもよく覚えているものですね。私は夏が近づくとこの歌が思い出されます。

口ずさんでいる時は歌詞の音がきれいだな、と思うくらいで、意味はあまり考えていなかったのですが、(数十年ぶりに!?)文字にしたものを目にするとまた新しく見えてくるものがありますね。

1898年の夏に伊良湖岬に滞在した柳田國男が、浜に流れ着いた椰子の実の話を藤村に語ったことがきっかけで生まれた詩だそうです。伊良湖岬は愛知県田原市にあり、太平洋と三河湾を望む渥美半島先端の岬で太平洋に面しています。

椰子の実が流れ着いた話を聞いて、こんなに素敵な詩がつくれるなんて藤村の想像力はすごいですね。そして、その日本語の美しさ。こうして漢字で読むことで初めて意味が分かるものも多いのですが(汗)、何て綺麗な表現なんだろうと惚れ惚れしてしまいます。

汝(なれ)、幾月、影をやなせる、浮寝、胸にあつれば、流離、激り落つ、八重…

難しい言葉の意味を書こうかな?とも思ったのですが、全部を説明してしまうと雰囲気が損なわれてしまうと思ったので、今日は是非その漢字と音と詩全体の雰囲気とで情景を想像してみてくださいね。

※グレッグ・アーウィンさんが訳した英語版の歌詞も素敵なので、興味がある方はこちらからどうぞ
The Little Coconut

1936年に曲がつけられて、一番最初に東海林太郎さんに歌われたそうですが、その音はこちら。

そしてこちらは、UAバージョン。

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Written by youseeaandiseeb
東京在住のグラフィック&デジタルデザイナー。 ものづくり、文化芸術、旅、そしてたまに宇宙についてのブログです。 私の視点を通して、この豊かな世界を紹介していきたいと思います。英語でも書いてます。