前回は、ロシアのコズミズム論(宇宙主義)について紹介しました。未来の理想の社会のために提言された「本当の平等な社会主義は、亡くなったすべての人々をもう一度生きさせることが使命である」という思想。
私がこの考えを知ったのは確か1年前くらいなのですが、あまりにも驚愕したので無意識化にしっかりと定着していたんでしょうね。というのも、コンサートに行った時に突然この思想を思い出したので、今日はその体験についてです。
先月ですが、東京のサントリーホールで開かれたコンサートに行ってきました。「サカリ・オラモ指揮 ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団 特別公演」の1日目です。この日はピアニストの辻井伸行さんとの競演がありました。とても久しぶりのサントリーホール、そして初めての指揮者、オーケストラ、そして辻井さんの演奏だったのでとても楽しみにしていました。
どこもそうですが、やはり会場の雰囲気っていいですよね。生の空気感といいましょうか。加えてサントリーホールはとても綺麗なので建築やインテリアデザインも楽しむことができます。
公演は以下の3曲で構成されていました。
– ムンクテル:砕ける波
– ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番《皇帝》
– チャイコフスキー:交響曲第5番
※ムンクテルはスウェーデンの女性作曲家です
当日はよく分かっていなかったのですが、よくよく思い返してみると、スウェーデンの作曲家に始まり、辻井さん登場、最後に人気曲で終わるというプログラムの構成も素晴らしいですね。
私は子供の頃ピアノを習っていたということもあり、少しはクラシックに馴染みがあり、たまに聴いたりもするのですが、年を重ねるに連れ頻度は高くなっているように思います。歌詞(言葉)なしの音楽は想像し放題なので、作られた背景や情景を思うとなかなか楽しいのです。
では実際にやってみましょう、ということで、ここから想像してください。
例えば最初の曲、ムンクテルの「砕ける波」。
まずは作曲家についてですが、ヘレーナ・ムンクテルさん(1852-1919)。
スウェーデンのダーラナ地方(スウェーデンの原風景が残る、スウェーデン人の”心のふるさと”)の裕福な家庭に生まれました。9人兄弟の末っ子で、首都ストックホルムの音楽学校で学びます。その後、オーストリアのウィーン、フランスのパリで音楽とピアノと声楽を学び、1885年にスウェーデンで初演が行われました。
当時、スウェーデン人女性作曲家としては珍しく、声楽曲やピアノ曲のみならず、管弦楽曲や歌劇などの大規模作品も手掛けたんだそう。また、スウェーデンではドイツ音楽から影響を受ける作曲家が多かったのですが、彼女はフランス音楽の影響を受けており、ロマン派に印象派が加味された様な作風で、色彩的な管弦楽法が特徴的のようです。
お写真はこちら(sverigesradio.seより)
続いて、曲名の「砕ける波」。この曲が作曲されたのは1890年代初期のこと。ムンクテルさんはスウェーデンに戻ってきていて、彼女が30代の頃です。
さぁ、もう一度、時代と作曲家と題名に思いを馳せて… そして実際の音楽を聴いてみてください。
…いかがでしょうか?
「砕ける波」。厳しい自然を感じさせる中にも、時に優美でうっとりとしたような旋律が印象的なこの曲。
北欧の水の都、ストックホルムを思い描いて作ったのでしょうか。どんよりとした雲がたれ込める、暗くて長くて北国の冬。海は荒々しく、波は大きく砕け散り自然の厳しさをしらしめるかのよう。雪が降ったり、嵐がやってくることもあります。そんな長い長い北国の冬にようやく春が訪れ、雲間からはうっすらと優しい光が差し込みます。
荒々しく砕け散っていた波の激しさは次第に落ち着いていき、次第にそのエネルギーは歓喜のものへと変わります。日が差し、水面はキラキラと輝き、春の到来を盛大に喜ぶ北国の海。
…今日の私はこんな感じの情景が思い浮かびましたが、いかがでしょうか?(例えば1年後など、感想がまた変化していくだろうことも楽しみです)
背景を調べて想像するって楽しいですねー!
…と、ここまで書いてしまったのですが、本題は違うところにあってですね。。意図せず違う方向に向かってしまったのですが、これはこれでいいかな。次回は、予定していた本題のコンサートの時に感じたことを書きます!
※今日のメイン画像はスウェーデンの風景画家、Berndt Lindholmさんの”Bränningar”(≒Breaking Waves 砕ける波) bukowskis.comより
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