数年前に、現代アートの学校のイベントで「佐藤貞一」さんを知りました。陸前高田で種苗店(佐藤たね屋)を営んでいる方で、東日本大震災の津波の被災者の方なのですが、2012年3月11日に被災手記の第一版が発行されました。タイトルは”The Seed of Hope in the Heart”。英語で書かれています。英語は得意ではないにも関わらず、英語で書いた理由は日本語では辛すぎて書けなかったから。心と言葉の間に少しだけ距離を置きたかったんだそうです。でも、事実を残して伝えるべきだと思ったという佐藤さんは、自分の言葉で伝えたいということで、英語版の版は増えており(2017年の時点で第5版)、また、多大なる支援をしてくれた台湾の人へ向けて中国語で、それから同様に応援してくれているスペインの人たちにもお礼の言葉を自分で伝えたいという気持ちで、スペイン語版の制作もされているそうです。
「事実を残して伝える」、それを「英語(外国語)で書く」という佐藤さんの行動に感銘を受けました。事実と向き合い伝えていくんだ、という使命感に尊敬を、でもあまりにも辛すぎるから英語で書くという正直さに心打たれ、またその選択に共感を覚えました。
大地震の時、私は東京にいたのですが、東京ですら今までにない大きな災害にパニックになって、死の恐怖を覚えことを思い出します。その後、何度か東北に行く機会があって被災者の方とお話しさせてもらうこともあったのですが、多くは語らず控えめだけれど、事実を受け止めて生きて行くんだ、という芯の強さと、それから色々な経験をされた方が持つ優しさを東北の人々に感じました。佐藤さんに直接お会いしたことはないですが、その人柄は映画(佐藤さんの活動の様子が映画にもなったのです『息の跡』)を通して感じることができます。
私もこのブログにより、書くこと、言葉にすること、伝えることをしているのですが、難しいと感じます。なので、佐藤さんの、津波の経験を言葉にして伝える、という行動を想像すると、とてもじゃないけど私にはできないな、と思いました。事実に向き合い、自分の感情を見つめて、それを言葉にして表現し、伝わるようなものにする…。そして今もそれを続けていて、表現する言語も増えている、というのは本当にすごい人だなと思います。
まっすぐな佐藤さんの思いと、それに共感した人たちとのつながりで、また新しいものが創造されていく、そんな、人の営みもまた素晴らしいなと思います。
あとは、私も英語でブログを書いている身として思うことは、母国語ではないと少し冷静になって日本語よりも書きやすい気持ちが分かります。いい意味でその言葉の重みを感じずに、言葉に、文章に自分の思いを重ねやすいというか、私の場合はある種の言葉に対する責任感が英語の方が軽いです 笑。
でも、佐藤さんの場合は、外国語だからこそできたストレートな表現がまた、英語や中国語、スペイン語を母国語とする人に、まっすぐに伝わっているんじゃないかな、と思うと、このプロジェクトはとてもいい循環が生まれているんじゃないかな、と想像します。
ふーっ、今日もまた読み返して、なかなか自分の真意がうまく言葉にできずにもどかしい思いがありますが、私もできる限り続けていきたいな、と思いました。
今日紹介した佐藤さんの情報はこちら。
<はなそう基金>
http://www.lets-talk.or.jp/passon/teiichi-sato/
<映画『息の跡』>
http://ikinoato.com/
Leave a Comment